IMG_2976 / emilygoodstein
前回、女性活用の壁になっている4つの問題点を挙げました。
その1つめに挙げたのが、「
待機児童問題」です。
「待機児童」ってよく聞くけど、具体的にナニが問題なの?どういうことなの?と思われている方も多いのではないでしょうか?
(お子さんのいらっしゃらない方はピンとこなくても仕方ないかと)
今回は、ワタシが日々接している、出産後の復職を希望する求職者の方たちの実情を踏まえながら、待機児童問題について紐解いてみたいと思います。
●保育所の数が足りない
一般的に子どもの預け先として知られているのは、「保育園」と「幼稚園」。
「幼稚園」は基本的に保育園と比較すると、子どもを預けられる時間が短い=共働きの家庭には適しにくいとされます。
(「預かり保育」を実施している園も増えてきてはいますが)
となると、共働きの家庭の子どもの預け先は、必然的に「
保育園」ということになります(両親が近隣に住んでいる場合等を除く)
厚労省の報道発表資料「
保育所関連状況取りまとめ(2012年4月版/PDF)」によると、全国の
保育所数は
24,038ヶ所とのこと。
保育園は大きく分けて、「
認可保育園」と「認可外保育園(いわゆる「
無認可保育所」」に分かれます。
認可外の保育園の中で、東京都独自の制度である「
認証保育所」というものがあります(
横浜市・
仙台市・
船橋市なども、独自の
認証保育所制度があるそうです)。
認可と認可外の違いは、入所対象・開所時間・基準面積・費用・申し込み方法など、様々です(ココでは詳しく解説はしません)
認証保育所は、認可と無認可のちょうど中間くらい。
ちなみに、企業や大学などが開設している保育施設も、認可外となります(認可・
認証保育所は公的
補助金が投入されるため、特定組織の構成員のみに利用者を限ることはNG)
前述の
厚労省の資料によると、約2.4万ヶ所ある
保育所の
定員は、228万8,819人で、
利用している子どもの数はを221万9,581人となっています。
なんだ、足りてるじゃん!なーんて思わないでくださいね?
以下の「
全国待機児童マップ(都道府県別)」(出所:
厚生労働省資料11ページ目) をご覧ください。

全国に約2.3万人いると言われる待機児童のうち、35%以上が東京都に集中しています。
1,000人以上の待機児童を抱える県は、大阪や福岡、沖縄など。
待機児童の半数以上(約68.5%)が特定の都府県に集中しているんですね。
個人的には、国の施策として待機児童の解消が進まないのは、都市部だけの問題=待機児童のいない県の理解が得にくいからだと考えています。
ぶっちゃけ、上の地図で白地(100人未満)の県にとっては、「関係ない」と思われても仕方ないのでは?と。
Safe Places to Play and Hang Out event at the Senedd / Digwyddiad Mannau Diogel i Chwarae a Chymdeithasu yn y Senedd / National Assembly For Wales / Cynulliad Cymru
●「潜在」待機児童の数はもっと多い
待機児童の定義とは、「
保育所入所申請をしているにもかかわらず、希望する
保育所が満員である等の理由で
保育所に入所できない状態にある児童(
Wikipedia「
待機児童」より抜粋)」
つまり、「復職したいけど、どうせ保育園に入れないだろうな…」と思っている家庭は含まれません。
前述の
厚労省の資料を見ると、待機児童問題は解消に向かっているように思えますが、コレはあくまで「
認可保育所の待機児童」のこと。
それ以外の全ての待機児童は含まれていません。
この試算によると、潜在待機児童の数は最大で
300万人以上とのこと。
あくまで試算値ではありますが、政府は公式に試算を発表すべきでは?と思ってしまいます。
キャリアカウンセリングの現場では、ちょうど今の時期、認可保育園に入れるかどうかの通知が届くので、ヒヤヒヤ・ハラハラします。。。
先ほども、とあるお客様から「認可、落ちました…」というメールが。。
「
保活(子どもを
保育所に入れるために保護者が行う活動)」というコトバが生まれるくらい、ワタシの働く東京では認可保育園に入るのは激戦です。
年度途中の入園なんて、ほぼムリです。
一番枠が空きやすい4月入園ですら、「30人待ちです」と言われた方も。
Alan with Ms. Diane / lesliepear
●保育園は儲からない
待機児童問題を解消するなら、
保育所を増やせばいいじゃん!と思ってしまうんですが、実情はなかなか難しいようです。
保育料は自治体や所得によって差がありますが、仮に1ヶ月の保育料を5万円と仮定します。
厚労省が昨年7月に発表した
国民生活基礎調査によると、2011年の1世帯あたりの平均所得は548万2,000円なので、単純に月割にすると約46万円ですね。
つまり、保育料は月の所得の約11%に相当します。
仮に10人の子どもを預かる
保育所があるとすると、
保育所の収入は
5万円×10人=50万円
となります。
保育士が1人いるとして、前述の月の平均所得46万円を給与として支払うと、
50万円-46万円=4万円
ここから、さらに光熱費や固定資産税などの場所代が引かれると、
確実に赤字ですよね?
しかも、
内閣府の「
保育の現状」という資料によると、認可保育園には
保育士の配置基準が定められています。
つまり、保育士1人で10人の子どもを預かることはできないんですね。。。
となると、必然的に保育士さんの給与を削ることになります。
(認可の場合、子ども1人あたりに確保するスペースが定められているので、場所を狭くすることはNG)
厚労省の推計では、潜在保育士は60万人以上と言われています。
資格は持っているけど、保育士として働きたくない理由で最も多いのが「
賃金が合わない(47.5%)」
ベネッセ教育総研次世代育成研究室が実施した「
第2回幼児教育・保育についての基本調査」(2012年10月~12月実施)によると、保育士の数は現時点ですでに不足しているとのこと。
政府は「
待機児童解消加速化プラン」として、5年間で待機児童ゼロを目指す、という方針を打ち出していますが、
保育所が増える=保育士の確保も必要ということ。
待機児童の問題、と言っても、問題はあちこちに散らばっています。
都心には
新築マンションがバンバン建っていますが、
保育所の設置とセットじゃないと建築を許可しないとか、法律で決めちゃえばいいのに…と思うのはワタシだけでしょうか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
■まとめ■
待機児童の問題、いろいろ調べてみましたが、だいぶフクザツですよね。
待機児童がほぼゼロの
スウェーデンでは、以下のように法整備されているそうです。
自治体は、親が保育園の入園を申し込んでから3~4カ月以内に席を提供することが法律で義務付けられている。私立も公立と同等の補助金が出て、保護者は同じ保育料金ですむ。
*
家庭で1歳未満の子どもは育てられるように、親に育児休暇中の経済的な支援体制が確立されている。スウェーデンでは給与の80%が支給されている。元の職場に復帰できる権利の保障がある。
*
幼児を持つ親は、6時間勤務にしても良いことが法律で保証されているため、子どもは、12時間も保育園にいる必要がない。
*
1人の先生が30人も40人も見なければならないという体制は、子どもにも先生にとっても大変な負担。子ども1人1人の成長を支える理想的な体制は、1クラス18人くらいで先生が3人。
*
50人くらいの小規模の保育園でも採算がとれるようにし、子どもに目が行き届くような保育と教育ができる。
(日経新聞「待機児童はほぼゼロ、スウェーデンの保育園の秘密」より抜粋)
日本とだいぶ違いますねー・・・
ちなみに、前回の記事を
Facebookにアップしたところ、
*フランス=学生やベビーシッターに預ける
*
シンガポール=メイドやNanny(乳母・ばあや)に預ける
というのが一般的だそう。
他国をうらやんでも仕方ないけど、日本で取り入れられることって無いのかな?
復職を希望するお客様からは、
「
働きたいけど預け先がない。
でも預けるためには、働かなくちゃならない(自治体の入園順を決める点数が取れない)」
という悲痛な声が聴こえてきます。
政府の「
待機児童解消加速化プラン」が上手くいくことを、ココロから願っております。
ではまた!
数年先の目標じゃなくて、今すぐ何とかしてよ!と叫びたい踊るOL(
@jaggyboss)でした。
<シリーズ「キャリアコンサルタントから見た女性活用の壁>
キャリアコンサルタントから見た「女性活用」を阻む4つの壁。 | 踊るOL。
労働時間より成果で評価する社会にしよう キャリアコンサルタントから見た女性活用の壁(2) | 踊るOL。
「働きたくても働けない」を解決する2つの提案 キャリアコンサルタントから見た女性活用の壁(3) | 踊るOL。