With papa / oksidor
少し間が空きましたが、4回にわたってお届けしてきた「女性活用の壁」
最後の壁は「家事・育児の負担割合が、女性のほうが圧倒的に高い」です。
2010年頃から「イクメン」という言葉を耳にすることが多くなってきました。
たしか、2010年の流行語大賞でもTOP10に入ってましたね。
この言葉が浸透したキッカケを調べてみたところ、長妻昭労働大臣が少子化打開の一助として「イクメンという言葉を流行らせたい」と国会で発言し、男性の子育て参加や育児休業取得促進などを目的とした「イクメンプロジェクト」を始動させた(2010年6月17日)のが発端のようです。
同プロジェクトの公式ツイッターアカウントもあるそうな。
(イクメンプロジェクト公式ツイッター:@ikumen_project)
確かに、ワタシの周囲でも「イクメン」が増えてきたように感じています。
でも、本当に「イクメン」は増えているのでしょうか?
厚生労働省の平成24年度「雇用均等基本調査(結果概要-事業所調査/PDF)」によると、男性の育児休業取得率は1.89%しかありません。
ちなみに、前年度は2.63%だったので、取得率は下がっていることになります。
(女性の取得率は83.6%(前年度調査 87.8%))
※ちなみに、男性の育休取得率は、平成29年度(2017)までに10%に引き上げるという目標が設定されています。
も、目標って達成できるのかしら…?
というわけで、今回は、
*なぜ男性の育休取得率を上げるのか?
*男性の育休取得率が上がらない理由
という切り口で書いていきます。
Papa and his boys / devinf
●共働き家庭で、妻だけが家事・育児をするのは無理
日本の主婦の家事時間は、1日平均4時間24分…!
※P&Gが家事と自分時間のバランスに関する意識と実態の調査を参照。
調査結果によると、アメリカや中国のほぼ倍。ひえー!
フルタイムで1日8時間働いて、通勤に往復2時間かけて、さらに家事を約4.5時間。
これだけで1日の半分以上が終わっちゃいますよね。。
さらに子どもの送迎、お風呂に入れたり、寝かしつけたり、育児も全部やったら、睡眠時間がどんどん削られてしまいます。
ちなみに、日本の働く女性の睡眠時間は世界的に見ても短く、男性より女性のほうが睡眠時間が短い国は日本くらいなのだそう(参照:総務省統計局 平成18年社会生活基本調査)
その結果、第1子を出産するタイミングで、離職してしまう女性が多い(約7割)というわけ。
一方、厚労省の調査によると、未就学児童のいる家庭で、夫の家事・育児関連時間は諸外国の半分以下。
「週平均」で、1時間(うち育児は33分)だそう。
数字は総務省「社会生活基本調査(2006)」を参照しているようですが、前述のP&Gの調査結果とだいぶ異なります。
(女性は7:27って書いてあるけど、そんなに短いわけないと思う)
あくまで参考数値かな、という印象ですね。
もちろん、共働きの家庭であれば、もう少し夫の家事負担率は高いとは思いますが…
普段、キャリアカウンセリングの現場で接するお客様も、
「旦那さんの帰宅、23時とかだし…」
「家事も育児も、結局全部自分がやるしかない」
というようなことをおっしゃる方は、決して少なくありません。
年収300万円台が主流と言われる現代、共働きする女性は、専業主婦の女性の数を超えています。
「女性活用」「女性の社会進出」を言うのであれば、「男性の家庭進出」も一緒に推進しなければ、女性の体力等を考えると難しいのではないかと、ワタシは考えています。
Papa and Elaine before brunch / Scott & Elaine van der Chijs
●男性の育休取得率が上がらないワケ
冒頭でご紹介した通り、日本では男性の育休取得率が、諸外国と比べて非常に低いです。
制度はあるし、政府も推進しているけど、なぜ取得率はアップしないんでしょうか?
ニッセイ基礎研究所「今後の仕事と家庭の両立支援に関する調査」(厚生労働省委託調査研究/2008年 PDF)によると、男性の約3割は育児休業の取得を希望しています。
希望者がいないなら分かるけど、希望しているのに取得できていないのはナゼなのか?
ワタシは主に2つの理由があると考えます。
<パタハラって知ってますか?>
前述のニッセイ基礎研究所の調査結果によると、育児休業の取りやすさについて、女性で「取得しやすい」と答えた人は73.5%、共働きの男性社員の場合は、「取得しにくい」が86.3%とのこと。
その背景には、「パタハラ」と呼ばれる現象があるようです。
昨年あたりから、「マタニティ・ハラスメント(=マタハラ)」という言葉をよく耳にするようになりましたね。
マタハラとおは、妊娠した女性社員に対する嫌がらせ行為のことです。
パタハラとは、その男性版。「パタニティ(=父性)・ハラスメント」のことを指します。
「男性社員はこうあるべきだ!」という上司や会社全体の先入観により、部下の育休取得や短時間勤務を妨害することを言うそうです。
背景には、世代間の子育てに対する考え方のギャップがあります。
親世代からの刷り込みは強烈ということですね。
(「女は結婚したら家庭に入る」「女は家庭で子どもを産み育てるものだ」などなど…)
<長時間労働が前提の職場>
厚労省「就労条件総合調査」(2013年)をみると、有給の平均取得率は47.1%しかありません。
多くの企業では、有給の繰越OKなので、1ヶ月程度であれば、無給の育休を取らなくても、有給で代用できる可能性が充分にあります。
また、これまで紹介してきたように、日本では長時間労働をしているヒトが非常に多い状況です(30代男性の約25%が週60時間以上勤務/総務省「労働力調査(2004)」)
つまり、会社全体が「休暇を取得しない&長時間働く」という前提で成り立っている可能性がある、というわけです。
そうなると、「育休を取ることで、マイナスイメージが付くのでは…」と不安になってしまいそうですよね。
実際、三菱UFJリサーチ&コンサルティング「両立支援に係る諸問題に関する総合的調査研究(2008年/PDF)」によると、約半数の男性が育休を取得しない理由について、「職場に迷惑がかかる」と言っています(同資料P.91)
他にも、「職場の上司や同僚の対応(22%)」「復帰後の仕事や職場への対応(15.8%)」「昇格や昇給 の影響(14%)」と、収入が減ることに対しての不安より、職場への不安を理由に挙げるヒトが多いようです。
ちなみに、育休の申し出や取得によって、雇用者に対して、解雇や不利益な扱いをすることは法律で明確に禁止されています(育児・介護休業法第10条)
※不利益な扱いとは、有期雇用者の契約を更新しない・更新回数が定められている場合に回数を減らすこと、非正規社員への変更を強要すること、降格や昇進昇格人事の考課に影響をさせることなど。
Scott and Papa / Scott & Elaine van der Chijs
●まとめ
今回のシリーズの記事を書くにあたって感じたのが、
「いまは過渡期なんだろうな」
ということ。
大手企業のトップのほとんどは、専業主婦の母親に育てられた人たちだろうし、モーレツに働いて日本経済の成長を引っ張ってきた人たち。
やはり、幼い頃から「鍵っ子」で両親共に共働き家庭に育ってきた人たちとは、様々な認識のギャップがあるんだと思います。
どちらが良い・悪いではなく。
また、今回は主に「子育て」に焦点を当ててきましたが、近い将来のことを考えると、介護も同じだよね?と思います。
育休の取得がままならないのに、介護休暇って取れるんでしょうか…?
シゴト+子育てだけでも大変なのに、さらに介護まで加わったら、もう女性1人の手に余りますよね…
ワタシのお客様の中で介護休暇を取得した経験を持つ方は、ほとんどいませんが、今後はそのあたりも考慮しながら働き方を選ぶヒトが増えていくのではないかな、と感じています。
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■編集後記■
4回にわたって書いてきましたが、知らないことがたくさん!
調べたり、レポート読んだりするのは苦ではなく、むしろ楽しかったです。
ワタシの意見が正解というわけではないし、100%正しいとも思っていません。
今回のシリーズによって、女性活用や子育て支援の課題・問題について、他人事ではなく、何かしら考えるキッカケになれたら嬉しいです。
ではまた!
厚労省の調査資料って何であんなに読みにくいんだろう…と目をシパシパさせてる踊るOL(@jaggyboss)でした!
<シリーズ「キャリアコンサルタントから見た女性活用の壁>
キャリアコンサルタントから見た「女性活用」を阻む4つの壁。 | 踊るOL。
待機児童問題ってナニ? キャリアコンサルタントから見た女性活用の壁(1) | 踊るOL。
労働時間より成果で評価する社会にしよう キャリアコンサルタントから見た女性活用の壁(2) | 踊るOL。
「働きたくても働けない」を解決する2つの提案 キャリアコンサルタントから見た女性活用の壁(3) | 踊るOL。